掏摸
- 中村文則
- 2016年9月7日
- 読了時間: 2分

大学3年生の時に大学付近で一人暮らしを始めることになり、
洗濯機、冷蔵庫、ベッド、テーブル、椅子、などなど
最低限のものを買い集めてるうちに、
テレビを買いそびれていました。
『お金が貯まったら買おう。』
と思ったままずるずると4年の月日が経過しました。笑
テレビが無いと、かなり困るだろう
と思っていたけれど
なんのこっちゃない。
見たい映像はYOUTUBEで見れるし
知らないといけないニュースは
ニュースアプリで目に入るし
友人と会話していても自然と入ってくる。
むしろ、ただテレビをつけてボケーっと見てる時間が無かった分、
能動的に時間が使えた気もする。
あの時、お金が無くて逆によかったのかもしれない。
(さらには、1日テレビを3時間以上見ている人とそうでない人とでは
記憶力に2倍以上の差が出るという実験結果もあるようです。。。)
いまからテレビを買おう!
という発想にはとてもなりませんが、
もちろん実家にはテレビがありました。
中高時代、友達との会話についていくため
ドラマをたくさん見てきました。
おもしろいドラマもたくさんありました。
でも、ドラマというのは、たいていが
主人公とライバル的存在がいて、ピンチになって、
踏ん張って、大逆転して、
ハッピーエンド。
とストーリーの相場が決まっています。
それにはもちろんテレビ業界の
スポンサーやらの存在が絡んでいて、
刺激的すぎる内容、
また刺激が無さすぎる内容
というのは、排除されているのでしょう。
でも現実はそんなきれいに物事が進むことは無く
いくら自分が頑張ったって、
副次的な影響により、
せき止められてしまうことも多くあります。
この小説を読むと
世の中には、自分の力ではどうしようも出来ない種類の
とても強い力がぐるぐると渦巻いていて
それには、抗うことも、従うことも出来ず
ただ流れていくしか方法のない強力な渦が存在している。
という現実を気づかせてくれます。
自分はそんなぐるぐるの中にぽつんと立たされている。
そして、誰かに流されながら、誰かを流しながら、
ただただ自分の見える範囲の中で生きていくしかない。と。
だから、適当に生きようということではなく、
自分の努力とは無関係に世界は流れている。
ということを感じながら、
余計なくよくよは取り払って
今、目の前にあるものに全力で取り組んで
生きていけばいいと思わせてくれる本でした。
p.s. 中村文則さんの他の作品では『教団X』・『銃』・『遮光』がお気に入りです。
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